長谷川裕一ファンとして「オタクの遺伝子」について語ってみる
もう少しこの本『オタクの遺伝子―長谷川裕一・SFまんがの世界』に対する感想を書いておきます。
- 作者: 稲葉振一郎
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2005/02/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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インタビューは読み応えがありました。ただし評論を目的としたものなので、稲葉氏の意見の確認が多いのと、特定の作品(「マップス」「クロノアイズ」「鉄人28号」及びガンダム系)以外への言及がない(もしくは省かれている?)のは仕方が無いとはいえ、ファンとしては少々喰い足りなく感じました。もっとも、ここまで長谷川氏の趣味・嗜好・思考・成り立ちに関する内容が公表されたのは初めてですので、価値は高いです。
全体の内容としては、私は稲葉氏とほぼ同世代で、かつSFファンだったので非常に楽しく読めましたが、そもそものテーマが(個人的に期待していた)長谷川裕一ファンが何ゆえ長谷川作品にひかれるかに関してではなかったので、そのあたりが「敷居が高い」と感じた由縁だと思います。ですのでこれから読まれる方は「はじめに」の部分をしっかり把握しておくことをお勧めします。
贅沢を言わせてもらえば、神の概念に関しては「サン・ド・ホリー西へ」に、タイムトラベルに関しては「メデューサ・ブレード」に、主人公の行動原理に関しては「鋼鉄の狩人」にも言及して欲しかったですし(余談ですが、長谷川氏と話す機会があった時に「サン・ド・ホリー西へ」は自分の作品の中でも珍しいもので、それは「死後の世界」があることだ、という意味のことを聞いてなるほどと思いました)やはり巻末資料にはせめて全単行本リストを掲載して、ファンブックとしての資料的価値をもう少し高めて欲しかったです。
結論としては、これから長谷川裕一ファンになろうという人に対する入門書にはならないが、ファンである人にとっては買っておいた方が良い参考書だと言えるでしょう。
<追記>山本弘のSF秘密基地の掲示板でも、少し感想が書かれてました。
文中、一部に敬称を省略させていただきました。